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改正職業安定法が医療分野の人材紹介に及ぼす影響

2018年8月7日by gnetdoctor1

 

おはようございます。

医師のキャリアプランを大事にしながら
転職、開業、経営のパートナーコンサルタントとなる
ジーネット株式会社の小野勝広です。

医療業界に人材紹介会社が本格的に進出してから
結構な時が経ちますが、
残念ながらその有用さよりも、
弊害の方が目立っているように感じます。

本日のブログのタイトルは、
【 改正職業安定法が医療分野の人材紹介に及ぼす影響 】として、
日医総研リサーチエッセイ№63号を参考にして考察します。

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なぜ職業安定法が改正されたのか?

2017年3月に改正職業安定法が成立し、
今年の1月から施行されました。

有料職業紹介事業者(紹介会社)の活動に関連して
求職者が不利益を被る不適切事案への対応が
改正の主な目的です。

改正の背景には、
医療業界において一部の紹介会社に見られた不適切行為について、
日本医師会をはじめとする医療関係団体が
行政に対して是正の申し入れを行ってきた事があると言われています。

実際に今回の改正は、
紹介会社に対して規律を求める内容であり、
人材紹介業界として経営改善を求められているのです。

主なポイントとしては、
①職業紹介による就職者数及び6か月以内の離職者数
人材サービス総合サイトで情報提供すること。

②自らの紹介による就職者への転職勧奨は2年間行わないこと。

返戻金制度を設けることが望ましい。

④求職の申し込みの勧奨を、
求職者に金銭等を提供することによって行うことは好ましくない。

これらとなります。

こういった改正によって
一部紹介事業者の行き過ぎた行為に
歯止めがかかることが期待されるとの事ですが、
現場から見ると
ピントがズレていると言わざるを得ません。

本当に一部業者を改善させたいなら
これらは全く効果をなさないでしょう。

まあいずれも当ブログでは
何度となく取り上げてきたものですし、
冷静に改正後の業界動向を見ても
実効性を挙げているとは決して言えません。

そりゃそうです。
すべての紹介会社に一律で是正をさせようとするから
ダメなのです。

まともな会社は粛々と対応するだけですし、
(いやそもそも改善すべき点がありません)
問題のある会社はこの程度の縛りでは何ら反省する事なく、
今まで通りに悪どい手法を続ける事でしょう。

医療界の紹介会社に対する評価

日本医師会は、
高額な紹介手数料や
一部の人材紹介会社による
紹介者への早期退職勧奨等の不適切行為といった
人材紹介ビジネスの拡大に伴い発生する弊害には
従前から強い問題意識を持ち、
労働行政に対して、
問題提起と是正の申し入れを行ってきたそうです。

また病院団体では、
2011年に実地調査を行い、
医療機関が人材紹介会社に支払う手数料の増大と
その弊害を指摘した他、
2013年に全日本病院協会が行った同様の調査結果を受け、
一部の人材紹介会社の
「転職を助長するないしは悪質なサービスと受け取られるアクション」が
大手メディアからも指摘されるに至ったとの事です。

これらの問題意識が発端となって、
職業安定法を改正した訳ですから
改正後も実効力がないのは致し方ありません。

要は問題がズレているのです。

まず高額な手数料との事ですが、
これは気持ちはわかるんですよ。

でも日本社会全体の職業紹介を見れば、
果たして高額と言えるのかどうか?
むしろ問題は医療業界内部にもあるのではないかと思うのです。

まず医師や看護師の紹介手数料は、
だいたい初年度年収の20%が相場となっています。

しかしビジネスマンの紹介手数料は、
30~40%が相場です。

医療業界の方が低いのです。

医師は年収が高いからと言われますが、
ビジネスマンだって職種や業種、ポジションによっては
1500~2000万円の年収はあり得ますし、
驚くなかれ、こういう人たちに対しては
40~50%の紹介手数料を企業側から提示する事もあるんです。

医療業界においては、
かつては紹介会社を利用する事がなかったので、
急激に紹介会社に支払う費用が増えたと分析しているのでしょうが、
それは紹介会社が悪いのでしょうか?

私にはそう思えません。

紹介会社の事をケチョンケチョンに批判する私ですら
そうは思えないのです。

その理由のひとつは、
医療機関、特に病院は
「人事」をないがしろにしてきた歴史があるからです。

現在、「人事部」を持つ病院はどれくらいあるでしょうか?
医師の招聘担当がいるとかではありません。
「人事部」です。

おそらく少数派だと思います。

通常、人事部は人事企画からはじまり、
採用、教育、評価、労務と幅広い仕事をしています。

医療機関はこれらの機能が非常に薄いんです。

だから採用は、
医師は研修医を集めるか、
医局から派遣してもらうか、
求人誌や求人サイトで募集を掛けるか、
看護師は新卒一括採用が
ほとんどではなかったでしょうか?

しかも教育はOJTが中心で、
現場で覚えろ、自分で学べ、自己学習せよ、
学会に行って勉強して、とほぼ自己責任。

評価はほぼなく、
頑張りや実績が報われるなんて
あまりないですよね。

労務はアウトソーシングしており、
経営陣は実態をあまり把握しておらず
それが36協定を無視した過重労働、
驚くような残業時間となって
メディアから叩かれている訳じゃないですか。

これらを紹介会社の責任にするのは間違っています。
だったら「人事部」を持ちましょう。

それで人事企画から採用、教育、評価、労務まで
しっかりやれるだけの「人事部」を作るコストと
紹介会社に支払うコスト、
どちらが高いかを考えて下さい。

事実、企業は大小は別にして
どこも人事部を持ってますよね。

多いところでは数十名の人事部員がいます。

その上で30~40%の紹介料を払ってでも
紹介会社から採用をしています。

つまり「人」にどれだけ価値を見い出し、
そこに費用を惜しまないかの問題なのです。
本来は…。

医療は労働集約型の産業のはずなのに、
今までは「人」をないがしろにしてきませんでしたか?
だから医師や看護師が離れてしまうのではないですか?

敢えて厳しい事を言わせて頂きましたが、
ここを見過ごしてしまうから
職業安定法を改正しても実効力がないのです。
問題はそこじゃないんですから。

と言いつつ、
じゃあ紹介会社に責任はないかと問われれば、
メチャクチャあります!と答えます。

当ブログでは、
問題のある紹介会社やその手法に対して
何度も何度も糾弾をしてきているように、
私は紹介会社には大問題があると思ってます。

上記の「転職を助長するないしは
悪質なサービスと受け取られるアクション」なんて
ホントおっしゃる通りです。

ひどい宣伝広告と
低レベルなマッチング手法、
結果に責任持たず、
金銭で釣ったり、
騙して再転職させたり…。
ホントとんでもない事がまかり通ってます。

紹介会社側はどう対応したのか?

2015年6月に日本人材紹介事業協会の内部に
突如として「医療系紹介協議会」たる組織が立ち上がり、
業界の自主的取り組みとして
いかにも自浄努力をしてますよというような
ポーズを示しました。

これについては
以前に下記のブログで詳しく書いております。

医療系紹介協議会!?
看護師の人材紹介業界に激震か?のその後はもっとひどい…。

2018年7月現在参加事業者は24社です。
600社以上あると言われる医療系紹介会社の中で
たったの24社です。

上記のブログに書いたように
そもそもこの組織に加盟している会社に問題があったのに
いかにも業界のオピニオンリーダー的に活動しようたって
そりゃ無理がありますよね。

だから参加する会社は増えない。

まともな事業をしてきた紹介会社は
あきれ返ってますよ。

まして掲げたガイドラインは
改正職業安定法を先取りはしているものの
もともと問題を起こした企業の集まりですし、
厚労省や労働局に対して
改善してますよ~というポーズですから
遵守するつもりなどはあまりないのでしょう。

事実会員企業の多くは、
相変わらずヒドイ宣伝広告を行い、
無茶なマッチングをして
医療機関や医療従事者の害になってますよ。

いったい何なんだこの協議会は…ってなものです。

まともな紹介会社は医療系紹介協議会など
加盟する必要がないんです。

まともじゃない会社が、
噂では厚生労働省にお灸をすえられて
この団体を作ったんです。

これじゃ業界に
自浄作用など持てる訳がないですね…。

行政の対応の実態を暴露すると…

上記のように医療系の紹介会社が問題視される中で
行政としても対策を取っています。

ひとつは今回の改正職業安定法の施行ですね。

その他、職業紹介事業報告の中で、
医師、看護師と独立した職種として統計を取れるようにして
現状把握ができるようになりました。

もうひとつが
職業紹介優良事業者認定制度の運営を開始した事です。

これは職業紹介業務の適正運営やサービス向上、
法令順守の徹底、人材紹介事業の特性を活かした
就業支援が行われる事を目的としておりまして、
審査基準を満たした事業者が
職業紹介優良事業者として認定をされるというものです。

これ自体は良い施策と思いますが、
現状は認定を受けた事業者が少なく、
2017年4月現在で医療系の紹介会社は
たったの11社しか認定されていません。
600社以上の中で11社です。

現場から見ると、
審査を受ける手間が掛かるので
結局マンパワーのある
中堅から大手の紹介会社しか申請できません。

また審査基準が一般的なものであり、
結局の所、優良事業者だけが認定されるものではなく、
規模が大きく、手続きを進める事のできる会社が
認定されてしまうんですね。

つまり当初の目的が果たせない仕組みなのです。

それこそ社長自らコンサルタントとして活躍するような
まともな経営理念を持ち、
医療業界への貢献を果たそうと奮闘する
中小規模の紹介会社は認定云々どころか、
申請する暇がないんですよ。

せっかくいい仕事をしている優良会社が認定を取れずに、
評判の悪いけど規模を持つ会社が認定取れちゃうんです。

私の知る限り、医療系の紹介会社で、
1,2を争うほどに評判の悪い某企業は
ちゃ~んと認定取ってますからね。

まったく意味がありません。

今後の課題は?

これまで見てきた通り、
問題は一向に解消されておりません。

医療業界は自院を振り返る事なく、
紹介会社を目の敵にしています。

医療業界からの圧力で行政も動いていますが、
実行策が明後日の方向を向いています。

紹介会社はそれを逆手に取り、
見ざる聞かざる言わざるという状況です。

これでは何ら改善されませんよね。

業を煮やした医療界は、
手数料の返金規定にまで口を出そうとしています。

これは本来各企業が独自に設定しているもので、
内政干渉以外の何物でもありませんし、
そんな提言をする権利が果たして
医療界にあるのでしょうか?

弊社は早期退職がほとんどなく(過去3年で1件)、
定着率の高い術を持っておりますから、
別に入職後6か月以内の退職は100%返金でも困りません。

しかし例えば医療機関の経営に対して、
患者が口出しをするような事を医療機関は認めるでしょうか?

お宅の医療水準は低いから治療が進まない。
なので今まで支払ってきたお金を返せと言われて、
気持ち良く返すでしょうか?

紹介会社に対して腹を立てるお気持ちはわかりますが、
打つべき手はそんなものではありません。

今まで打ってきた手は、
悪質な会社を生き残らせて、
優良な会社を困らせている事に
一刻も早く気づくべきです。

私が提言するなら、

① 医療機関も人事部を持つ事。

② 再転職を促す紹介会社、
金銭等を提供して登録者確保をする紹介会社、
過度な宣伝広告をして求職者を惑わせている紹介会社、
一定数以上の早期退職を発生させている紹介会社、
返戻金制度を持たない紹介会社、
これらの紹介会社に対して
事業停止処分、許可取り消し処分を断固として課す事。

これです。
これで確実に医療系の採用シーンは健全化されます。

すべての医療系紹介会社に対して
一律で改善を求めても無駄です。

悪質な企業は一部であり、
それ以外の真っ当な会社が困惑し、
マッチング以外の業務に翻弄されるだけです。

悪質な企業は業績がいいので、
いくらでも対策が打てちゃうんですよ。
前述の医療系紹介協議会のようにですね…。

ダメなところを退場させる。
それ以外に策はないと思います。

エージェントの1人である私としてもそれは歓迎です。

今まで何度医療機関の採用担当者から
愚痴を聞かされた事か…。

これほとんど数社です。
数社に片寄っているのです。

これらの会社を退場させれば、
自ずと正常化して、
真っ当な会社に医師が集まります。

組織というのは規模が大きくなれば劣化します。
勘違いした人間が自分たちは何をしても許されると考えます。

組織を維持する為に、
多額の売上を必要として、
どんな手を使ってでも社員に売上を上げさせます。
これが低レベルなマッチングの要因です。

このどんな手を使ってでも…を実行したら
事業を停止、廃止するのです。

業界人として健全化には大賛成です。
しかしこれまで打ってきた手は有効ではありません。

さらに全体を相手にした愚策を打ち出すのではなく、
一部の悪質な企業を狙い撃ちするのです。
絶対にこちらの方が効果があります。

日医総研さん、
よく分析された資料をお作りになってますが、
もっと現場の声を吸い上げた方が良いですよ。

少なくとも私は全面的に協力しますし、
医療機関の採用担当者に対して、
こういうアンケートを取ったら、
悪質な企業が把握できるというアイデアもあります。

ま、いろいろ述べてきましたが、
医療を愛し、
医療従事者により良い未来を手にして頂きたい私どもとしては、
医療系紹介会社の健全化を強く支持しますし、協力します。

医療は国の根幹、
医療従事者は国の宝なのですから…。

それでは、また…。

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