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飛行機内での救急医療援助 ~その手を挙げるべきか~

2018年10月17日by gnetdoctor

おはようございます。

医師のより良き未来を、
転職、開業を通じて実現していくために日々勉強中!
ジーネット株式会社の小野勝広です。

医療と法。

純粋に人の命を救う、
その崇高な行為には
常に法律問題が付きまといます。

医師のライフプランニングを
トータルでサポートする
ジェネラリストを目指す者として、
皆さまに何かしら提供することができないだろうか。

そのように考え、
今回から不定期に医療にまつわる
法律問題について書いていこうと思います。

本日のブログのタイトルは、
【 飛行機内での救急医療援助 ~その手を挙げるべきか~ 】
といたしました。

救急医療 ドクターコール 急患 プライバシー権の侵害 個人情報保護 応召義務 医師法19条 善きサマリア人の法 医師事前登録制度 医療設備 医師キャリア相談 医師転職相談 クリニック開業相談 医師紹介会社 医師転職エージェント クリニック開業コンサルタント ジーネット株式会社

ドクターコール

「お客様の中でお医者様はいらっしゃいませんか?」

そんなドラマのような出来事に
過去に一回だけ遭遇したことがあります。

その時は、3,4名の外国人医師の方が
名乗りを挙げていました。

もし、医療設備もなく閉塞された空間である
飛行機内で急病に見舞われたら。
そう考えるとゾッとします。

助けてくれた医師には
感謝してもしきれないくらい
感謝することでしょう。

しかし、その時遭遇した急病の方は
ラッキーだったのでしょう。

現実はそんなに甘くはないようです。

躊躇する理由とは

あるアンケートによると、
飛行機内でのドクターコールに応じると
答えた医師は40%ほどで、
その時になってみないとわからないと
答えた医師は50%ほどだそうです。

また、ドクターコールに応える医師であっても、
一度目のコールで協力を申し出る医師は
70%程度だそうです。

このことから医師はドクターコールに対して
かなり躊躇していることがわかります。

医師がドクターコールに躊躇するには
大きく2つの理由があります。

一つは急病人の状況がわからないために
自分の専門領域で適切な処置が
できるかどうか不明であること。

もう一つは法的な責任問題に
発展する恐れがあるということです。

どちらが法律問題?

実はこの二つともが法律問題なのです。

一つ目の急病人の状況を知るのに
何の法律が関係あるんだ?

実は医師が「どうしました?」と
急患の方に声を掛けた時点で、
診療を開始したと見なされて
責任が発生する可能性が高いのです。

診療を引き受けるかどうかの判断するのに、
急患の方に直接声を掛けることはできず、
声を掛けたら医師としての措置が必要となります。

診療を引き受けるか否か、
できれば声を掛ける前に症状を知りたいですよね。

プライバシー権の問題

でも、機内アナウンスで
「急患の方はこのような症状です。」なんて言ってしまうと
プライバシー権の侵害となる可能性が高いといえます。

また、ドクターコールに応じた医師であっても
医師が診療を受諾する前の段階では
乗客の一人に過ぎません。

他の乗客に状況を説明することも
同様にプライバシー権の侵害となる可能性が高いといえます。

こうして医師はどのような症状か全く知ることができず、
対応できるかどうかわからない
急患の診療を引き受けなければならないのです。

テクニカルな話として、乗客全員に約款等で
「急病時には症状を機内アナウンスしますよ」と
同意することを条件としてみたらいかがでしょうか。

その場合でも、
医師が偶然搭乗していれば効果的かも知れませんが、
搭乗していなければただ無関係の乗客に
プライバシーを公開されただけになってしまいますので、
このような同意を義務付けることは妥当とはいえません。

個人情報保護の問題

関連して、搭乗者名簿から医師に直接声をかけて
「このような症状の急患がいます」と
協力を要請したらどうでしょうか。

これは、搭乗する顧客名簿の流用になりますので、
個人情報の目的外利用にあたりそうです。

緊急時ですから、違法性はないかもしれませんし、
あらかじめ「医師の方は個人情報をドクターコールに使用しますよ」
としておけば問題ないかもしれません。

でもそうなると、
医師の応召義務(医師法19条、
応召義務についても機会があれば書いてみたいと思います)
も相まって、ドクターコールに応じなければならない
気運が生じるおそれがあります。

それでは医師は機内でリラックスしてお酒を飲むことも
ゆっくり睡眠をとることもできなくなり、
違う人権問題に発展しそうです。

いずれにしてもドクターコールの応否によらず、
診療を引き受ける前に症状を把握することは
かなり難しそうです。

善きサマリア人の法

もう一つの法的な責任については、
民事上、刑事上の責任を負う可能性が否定できません。

アメリカやカナダでは
「善きサマリア人の法」
(「災難に遭ったり急病になったりした人など
(窮地の人)を救うために無償で善意の行動をとった場合、
良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、
たとえ失敗してもその結果につき責任を問われない」
という趣旨の法である。
-ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典より引用)
が制定され、飛行機内での救命措置に対し
「良心的かつ誠実に」対応する限りは
責任を負うことはないようです。

緊急事務管理とは?

日本でも「善きサマリア人の法」を
導入しようと議論はあるようですが、
民事上では「緊急事務管理(民法698条)」が適用されそうです。

事務管理は善管注意義務を負うため、
かなり高い注意義務が求められます。

しかし、「本人の身体、名誉又は財産に対する
急迫の危害を免れさせるため」に行う緊急事務管理は
「悪意又は重大な過失があるのでなければ」
責任を追求されることはありません。

「善きサマリア人の法」にいう「良心的かつ誠実に」との
具体的な差異はわかりませんが、
近しいものも感じます。

そして、悪意とは「ある事実を知っていること」、
重大な過失とは「悪意と同視しうるほど」
重大な過失ですから、
緊急事務管理が成立する場面で
通常の診療を行う限り責任を追求することは
かなり難しいといえそうです。

緊急避難とは?

刑事上は「緊急避難(刑法37条)」が成立しそうです。

緊急避難は
「自己又は他人の生命、身体、自由又は
財産に対する現在の危難を避けるため、
やむを得ずにした行為」について
違法性が阻却される、
つまり罰せられないという規定です。

飛行機内での急患を診療する行為は、
応召義務があるのかないのかという議論はさておき、
医療設備の整っていない飛行機内でやむを得ず、
急患の方の生命を守るために診療するわけですから、
緊急避難が認められる可能性が高いといえそうです。

躊躇するのは当然です

その他にも、先ほどの応召義務もそうですが、
そもそも飛行機内ではどこの国の法律が適用されるのか、
航空会社と医師の間での責任の所在など
様々な問題があります。

急患の方が医師に責任を追求するケースは
想定しがたいのかもしれませんが、
訴訟に至らずともこれまで紛争がなかったわけではありませんし、
これら法律問題と対峙し、場合によっては
取調べに時間を奪われなければならないとしたら
手を挙げることに躊躇するのは当然かもしれません。

医師事前登録制度の効果

ご存知の方も多いかもしれませんが、
JALとANAはこれまで海外の一部の航空会社で
評価されてきたとされる
「医師事前登録制度」を設けています。

登録によるものとはいえ、
座席を把握され、急患が生じた際には
直接声を掛けられます。

応じるかどうかは任意とされていますが、
なかなか断れないでしょう。

そして、医師がドクターコールに
応じて損害賠償請求をされても、
原則的に医師は賠償責任を負わないように
なっているそうですが、
場合によっては訴訟に巻き込まれ、
また、取調べに時間を奪われる可能性が
あることに変わりはありません。

法整備が必要です!

医師が安心してドクターコールに応じれるような、
また、応じなくてもよいような法整備が必要ではないでしょうか。

既存の法律で対応できるから。ではなく、
急患の症状を知ることや
飛行機内で十分な応急手当ができる程度の医療設備を整えること、
そして、誠意をもって対応した医師が
治療後のトラブルに巻き込まれないこと、
このような法整備がなされてこそ初めて
医師が安心して診療を引き受けられるようになるのではないでしょうか。

つらつらと語ってみましたが、
私の知識不足と表現能力不足が悪いのですが、
法律問題は書くのが難しいですね。

でもこれにめげずに書いていこうと思います。
ご興味ある法律問題があればぜひ教えて下さいね。

それでは、また…。

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